イチゴ インタビュー

朝倉淳也弁護士に聞く

聴き手:千川健一弁護士
2006年11月28日
いちご綜合法律事務所(赤坂)会議室に於いて

朝倉淳也(第二東京弁護士会所属)
数々の環境問題に取り組み続ける「森の風法律事務所」のメンバーで、最近ではスエーデン環境法典の翻訳などにも携わった。カヌーや山スキーなど自然と丸ごと触れ合うスポーツを愛し、自然の権利訴訟など、環境法の最先端の論点を追求している。


自然環境への関心


千川 朝倉先生は、山スキーをやられるんですよね。
朝倉 うん、やってますよ。
千川 朝倉先生はカヌーも得意だし、究極のアウトドア派と言えますね(笑)。そういえば、山登りといえば、以前、南米の高い山 に登られましたよね。
朝倉 山スキーでね。
千川 日本じゃおやりになられないんですか?
朝倉 いやいや、日本でも登ってますよ。これからシーズンでしょう。
千川 是非、僕も一緒に行ってみたいと思いますが、僕でも、足手まといにならないでやれますか。
朝倉 ゲレンデスキーがある程度滑れればやれますよ。まぁ、一度ゲレンデで見ないとね(笑い)。
千川 そうか、じゃ駄目だ。(笑い) 山登りとか山スキーとかは高校時代からやられていたんですか?
朝倉 そうですね。
千川 先生が登った山の中で、一番高い山はどこですか。
朝倉 一番高いのはアラスカのマッキンレー。植村直己さんの亡くなった 山です。最近はヨーロッパの山に登ってます。
千川 ヨーロッパのどんな山に登ってますか?
朝倉 一昨年、モンブランに行ったんですが、その時は天気が悪くて途中で戻ってきました。
千川 その時は山スキーですか。
朝倉 そう、山スキーですね。
千川 大体、登山にはスキーを付けてというのが最近のスタイルですか。
朝倉 最近はそうですね。
千川 そうですか。日本ではどの辺が面白いんですか。
朝倉 まぁ、いろいろありますが、八甲田山とかでしょうか。
千川 八甲田山ですか。当然危険も伴うんでしょうね。
朝倉 雪崩が怖いですね。
千川 朝倉先生は、いつもひょうひょうとカヌーなんかもやってる感じなんで危険とは余り縁 がないようなイメージを勝手に抱いてるんですが、やはり、危険な目に遭われたこともあるんでしょうか。
朝倉 雪崩は怖いですよ。3年前イタリアのグランパラディッソというところで、 小さかったけれど表層雪崩に遭遇しました。巻き込まれたら危なかっですよ。その前にも、19才の頃、日本で雪崩に巻き込まれましたよ。
千川 それは、どこですか。
朝倉 穂高、屏風岩って知ってますか。当時は、日本で最大の600 メートルの岩壁だった。そこを3人で登っていて岩登りを終わっ て前穂高に続く北尾根を登っている途中で、前行った2人が巻き込まれまして、 真ん中のヤツは雪面上にいたんだけど、先頭のヤツが中に埋もれちゃっ て。 でも10分くらいで掘り出したので大丈夫でした。
千川 当然、埋まっている間は息が出来ないですよね。
朝倉 できません。ただ、今はね、アバラングというベストがあって、雪の 中でも空気があるわけ、雪崩に巻き込まれても2時間は息ができるんです。
千川 へーぇ、そんなベストがあるんですか。雪崩対策用のベストというわけですよね。
朝倉 ヨーロッパは本当に雪崩が多いから、そういうものも進んでるんです。雪崩に遭うとバ ルーンが膨らんで上へ上へ浮いていくという道具もありますし。でも、そういうのを準備するとなると結構お金がかかるんですよ。
千川 へぇー、そうなんですか。弁護士になる前から、そのように自然に 触れ合う機会が多かったから、環境問題に携わってみようと考えたんですか。
朝倉 そうですね。
千川 山登りやカヌーをしてきた経験は、朝倉先生が弁護士になってから環境問題を扱っていこうということに関係あるということなんでしょうか。
朝倉 まぁ、山に入ると、当然、昔から砂防ダムはあるし、林道はあるし、当然それはバックボーンとしてあるでしょうね。

  

長良川河口堰から


千川 具体的なきっかけって何かありましたか。
朝倉 具体的なきっかけは、長良川河口堰でしょうね。
千川 長良川河口堰は今、どういう風に決着がついたんですか。
朝倉 社会党が連立で政権を取って建設大臣が社会党からでたので、止めてくれるかと思ったら、裏切られ、
結局、社会党がゴーサインを出して水門を閉めちゃったんです。
千川 社会党がゴーサインを出したんですか。それでは、結局反対運動は功を奏しなかったんでしょうか。
朝倉 それはそうですが、今からでもただゲートを揚げれば済むことです。ヨーロッパ、オランダなどでは河口堰を撤去しちゃうという運動もありますから、それで終わったわけではないですよ。あの時点では作って水門を閉じられちゃったけれど、その時に中心で運動をやっていたメンバーは今でもいますからね。
千川 メンバーって弁護士ですか。
朝倉 弁護士とか団体とか。今、八ッ場ダムの裁判で、その時の人達がたくさん参加していますね。
千川 長良川河口堰では、訴訟にもなっていますよね。
朝倉 ありました。
千川 それには朝倉先生は参加されたんですか。
朝倉 訴訟には参加はしてませんが、運動体として参加しました。
千川 千川 確かその頃、朝倉先生から長良川河口堰ストップのステッカー頂いて、ぼくの車にも貼っていた頃ですね(笑)

森の風事務所とオオヒシクイ自然の権利訴訟


千川 森の風事務所の創立はいつですか。
朝倉 来年の4月で9年を迎えます。1998年創立です。
千川 その時の創立メンバーは何人くらいなんでしょうか。
朝倉
初め、4月は3人、5月に環境世界では有名な坂元雅行が入って4人になりました。、今は7人です。
千川 事務所の弁護士全員が環境問題を扱っているんですか。
朝倉 そうです。
千川 そういう事務所は他にはないでしょうね。
朝倉 ありませんね。うちの事務所だけだと思います。
千川 具体的にはどんな事件を扱っていらっしゃいますか。
朝倉 オオヒシクイ自然の権利訴訟とか。現在は、石垣島空港建設差止訴訟などですね。
千川 オオヒシクイの裁判は鳥を原告にしたものですね。このオオヒシクイ自然の権利訴訟は森の風法律事務所でやっていたのですか。
朝倉 この裁判をする為に、森の風法律事務所を作ったようなものです。
千川 そうですか。これは霞ヶ浦でしたね。
朝倉 そうです。ここがオオヒシクイという鳥の越冬地の最南端なんですよ。昔はもっと南まで行ったいたんだけど湿地がなくなっていって、今では霞ヶ浦が最南端なんです。オオヒシクイという鳥は、湿地が好きなんですね。
千川 霞ヶ浦に開発計画があったんですか。
朝倉 開発計画というか圏央道の茨城ルートがヒシクイの越冬地を潰してしまう計画になっていたんです。
千川 それは確か原告をオオヒシクイにしたんですよね。
朝倉 そうです。でも、人やNGOも入ってますよ。やり方が住民訴訟でしたから。
これも半年くらい奄美大島でアマミノクロウサギを原告にした奄美自然の権利訴訟が動物を原告にした訴訟の第一号でした。その弁護団が、環境法律家連盟の元となった人達で、一緒にやってました。
千川 このオオヒシクイ訴訟ですね。
朝倉 西ではアマミノクロウサギを原告にして、東でオオヒシクイを原告にしてという、そういう流れです。
千川 オオヒシクイや奄美では鳥や猫を原告にするという意図や目的は何だったんですか。
朝倉 日本の裁判自体は主観訴訟だから、人の利益を侵害しないと何もできない。それで本当にいいのか、開発する側の便利になるとか、洪水が起きないとか、そういう抽象的な公共性だけで自然を破壊してしまっていいのか。開発することも大事かも知れないが、自然を守る、もしくは生態系を守る、そういうことも大事な公共の利益なんだということの問題提起をしたかったんです。アメリカでは意外と普通の形なんです。シマフクロウが勝ったりとか。
千川 そのような原告が人じゃなくて動物というような、前代未聞の訴訟で裁判所はどのように判断しましたか。
朝倉 奄美の場合にはアマミノクロウサギって書いたものはまったく無視された。つまり、イタズラ書きと同じとして、裁判所は無視しました。ヒシクイの場合には一応受け付けて、ヒシクイの部分だけ分離して、裁判所は判決を書きました。
千川 訴訟委任状がないじゃないですかという議論が出てきそうですが、それはどうされたんですか。
朝倉 これ。
千川 あっ、足形(笑い)
朝倉 訴訟提起の前にマスコミも来て、オオヒシクイという鳥は3月になると帰っちゃう、その前に行って裁判を起こしますよと言って、足形をぽんと押したんです。
千川 そこには皮肉なんかも含まれてるんですか。
朝倉 というか、なるべく報道して欲しかったんです。みんなに広く知って欲しかったんですね。オオヒシクイという鳥自体、あんまり知られていなかったですからね。
千川 この裁判は、どうなってるんですか。
朝倉 人間原告の組で終わってます。裁判所の結論は違法性無し。
千川 こういう自然にかかわる訴訟は何件くらい今までにやっておられるんですか。
朝倉 オオヒシクイの次は生田緑地でした。岡本太郎美術館というのを川崎市が作ろうとしてて、それの裁判がこの次でした。
あと、横田基地だとか諫早、今やってるのが横田と八ッ場ダムの裁判です。
千川 八ン場? どこですかそれは。
朝倉 群馬。
千川 その裁判では何を訴えてるんですか。
朝倉 まぁ、一つは、作る必要ないだろうということ。もう40年以上前から、ずーっと手つかず。たまたま場所は中曽根元首相と福田元首相の接点にあり、お互いのパワーバランスの中でできなかった。国交省は利根川水系の最後の巨大ダムということを言ってる。
千川 そういう政治的な背景の中で造られようとしているということですか。
朝倉 ダムを造ること自体が目的なんですね。国交省は今造っているダム以外は造らないと言っているんです。しかし、そのかわりに、100年経つともう砂に埋もれて使い物にならなくなる設計のダムが、現実にはそれを遙かに上回るスピードで埋まって行っている。だから、国交省は長野にある美和ダムでバイパスを造って、洪水の時に砂をダム湖に入れないで下に流すという工事をして、7月に第一回目の運用をしました。多分、ほとんどのダムでバイパスを造るという工事をやろうとしている。公共事業で金が落ちないと彼らもやること無くなっちゃうし建設業界も詰まっちゃうということで無駄な事をいっぱいやってるんです。

弁護士業務とボランティア


千川 お話を聞いてると、環境問題に関する運動家という面と、弁護士という法律家の面と両方を一緒にやってらっしゃるような感じもしますが。
朝倉 やはり弁護士ですよ。でもウチの坂元などは事務所にある野生生物保全研究会というNPOを事務所を作った時からやっていて、もう10年になります。彼の場合、どちらかというと弁護士業務よりそちらの方に重点がかかっている感じですね。
千川 そういう人も森の風事務所にはいらっしゃるんですね。環境問題で食べていけるのかっていう疑問があるんですが、環境問題を仕事で扱うということは、お金の問題は度外視してるということですか。
朝倉 本当は事務所設立当時に10年経ったら、まぁ少しはそれ専門で食べていける時代が来るのかと思ったんですが、結果として、相変わらずボランティアでやってますね。
千川 収入そのものは一般の民事事件とかをやりながら、環境問題を扱う事件に関しては、現在ではボランティア活動みたいなものになっているということですか。
朝倉 そうですね。
千川 で、先生が事務所を立ち上げられた時は、10年経てばお金になる仕事になるだろうという期待もあったということですね。
朝倉 仕事にしないと、続かないし、そうしなければいけないと思ってました。相手側はみんな金を貰っているんです。たとえば、廃棄物の裁判などで毎回会う相手方弁護士がいますけど、その人は、自治体の事件をどんなに大きくても小さくても1件100万円でやってる。それは先代からそうしていて、それは廃棄物とか環境系の憎まれ側の代理人を商売として割り切ってやっている人がいるってことです。資料なんかにしても、彼は仕事としてお金を貰って集めている。こちらはボランティアで仕事の合間を見てやる。そういう意味では環境訴訟における武器というか、資料収集能力に関しては不平等ですね。
千川 要するに、公害問題や環境問題では、訴えられている側の方が大抵の場合は資金的に潤沢だと。
朝倉 潤沢ですね。ただ、こういう裁判を起こすと勝ち負けっていうとだいたい最初から想像できるわけです。ただ、裁判になれば普通の交渉では出てこない資料がいっぱい出てきます。岡本太郎の美術館の時も建設の細かい図面とかが相手方から出てきました。
千川 なるほど、裁判の勝ち負けだけでなく、裁判の過程で提出される証拠資料が出てくるという意味で裁判を起こすことに意味があったりもするんですね。
朝倉 そうですね、普通に自治体に行っても説明してくれないんです。だから、住民も怒るわけ。それが、裁判を起こすと情報が出てくるわけです。
千川 運動としてだけ環境問題をやっていても国や自治体が出してこない資料が、裁判をすると相手から出てくる。そういうこともあるんですね。

環境問題と収入


千川 先ほど、朝倉先生がおっしゃいましたけれど、本来、環境問題は金にならないのが、どうしたら環境問題を扱う弁護士が環境問題で収入を得られるようになると思いますか。
朝倉 そうですね、例えばアメリカなどではシエラカップってあるでしょ。
千川 シエラカップですか。
朝倉 シエラカップ、山で使う。あれの元々の団体がシエラクラブというアメリカの自然保護の大きいNPOでね。そこは、全米の環境問題に関する事件にボランティアでスタッフの連中が行って請託をするわけ。彼らは給料貰っています。
千川 シエラクラブから環境問題を担当した弁護士はお金を貰ってるんですか。
朝倉 そう、それはアメリカの税制が、税金を払う代わりに、そういう団体に寄付すれば税金は控除されるシステムになっているからです。日本の場合はNPOに寄付しても税金は取られちゃうから、大きい団体以外は寄付されたらかえって困るんですね。いきなり、ポーンと寄付されても、自分達が税金を払わなきゃならないですからね。お金で貰えばまだいいんだけど土地とか貰ったってしょうがない。
千川 寄付する側も寄付金が経費で落ちないし、寄付される側も、それで課税されちゃうということですね。アメリカの場合は全米で、そういう認定された団体に対する寄付金が経費になって、税金から控除されるというわけですか。
朝倉 そうです。1000万円税金納付するんだったらば200万円寄付すれば国が200万控除する。

スエーデンの環境に対するシステム


朝倉 スウェーデンなんかは、環境裁判所というのがあるんです。環境弁護士と言われるている人たちが40人位いるのかな。
日本の人口とスウェーデンの人口を割っていくと、日本だったらだいたい5〜600人環境弁護士がいてもいいってことになりますね。
千川 千川 スウェーデンの人口は約900万人ですよね。
朝倉 ただ、よく話を聞いてみると環境法に精通すると企業から報酬がくるんです。環境を守るシステムが厳しいから企業はそれをクリアしなければいけないので、それについての専門弁護士がいるわけ。
千川 スエーデンの環境を守るシステムが厳しいというのは具体的にはどういうことなんでしょうか。
朝倉 日本で環境訴訟をやると、環境破壊を訴える側が開発行為等の違法性を立証しなければなりませんが、スエーデンの場合には逆で、開発行為をする側の方で違法でないことを立証しなければならないんです。だから、開発行為をする企業などは、その開発行為自体の違法性を弁護士を使って自ら検証し、立証していかなければならないのです。
そういう面もあるし、スエーデンでは自治体が基準なんで、何か作ろうと思っても自治体にダメだと言われないようにということです。逆に住民の側で環境問題をやってる弁護士は1人か2人しかいない。
千川 じゃあ、住民側で環境問題を扱っている弁護士は、朝倉先生の事務所だけで7人いるわけですから、日本の方が多いんですか。
朝倉 スエーデンの場合は刑事事件のごく一部を除いて、誰でも訴えることができるんです。弁護士が法律事務を独占しないシステム。
例えば、野鳥の会なら、そこの専属の法的な素養を持った人?i?????m???????¢?X?^?b?t?jが裁判を担当する。守る側でそういう形でやるわけ。
千川 そうした環境訴訟を弁護士が代理人となってやるとは限らないってことですか。
朝倉 そうです。どちらかというと、スウェーデンの弁護士は渉外弁護士に近いんです。
千川 もう少し、具体的に教えて頂けますか?
朝倉 例えば、日本の企業がスエーデンで何かをしようとすると、すごく規制が厳しいわけです。まず、それをクリアしないと建物さえ建たない。それをスエーデンの弁護士がノウハウを教えるというのが、スエーデンで環境問題を扱っている大半の弁護士の仕事ですね。
千川 要するに法律とか何かを詳細に調べて、あらゆる基準をクリアしていくって事を書面にしたりしてお金を貰う、そういうシステムですか?
朝倉 環境裁判所が日本にはないですからね。それから、スエーデンには環境検察官っているんです。
千川 環境検察官というのは、どういう仕事をしているんですか。
朝倉 ゴミの不法投棄等の環境破壊の捜査・訴追などを仕事としています。日本の裁判なんかと違って、本当に公開でいろいろやる。そういうシステムが日本にも必要ですね。日本では誰が決めたか判らないものが、勝手に決まって、いきなりそれが公共の利益だといってはじまりますから。
千川 環境問題についてスエーデン方式みたいなやり方を採用している国は他にもあるんですか。
朝倉 コスタリカが近いと聞いています。ニュージーランドにもあります。
千川 コスタリカというのは環境問題については、かなり厳しいのですか。
朝倉 コスタリカは、スエーデンの真似をしたんですよ。
千川 そうなんですか。じゃぁ、今、環境裁判所を設けて、環境について厳しい規制をしているのは世界的にはスウェーデンとコスタリカ、ニュージーランドだけということになりますか。
朝倉 そうですね。「環境裁判所」という点では。

環境問題の深刻な国々


千川 環境破壊が酷い国ってありますか。
朝倉 一番ひどいのは中国ですね。ロシアもひどい。
千川 日本は下から数えた方が早いとか?
朝倉 うん、全然早いと思いますよ。
千川 特に日本のここが悪いという・・・資料的には公共の利益という名の下に全て説明が付いてしまうという話話がありましたが、問題は裁判所ですか、立法者ですか。
朝倉 全て悪い。
千川 全て悪い。(笑) 住民の環境問題に対する意識というのはどうでしょうか。
朝倉 それは10年前に比べたら、随分上がってきてるでしょう。ただ限度はありますね。
千川 それに対して国のシステムが対応してないということでしょうか。日本の企業なんかはどうですか。
朝倉 企業は、外国に行ってるところは、向こうに行ったら厳しい環境規制に従わなくちゃいけないから、そういう面ではグローバルな企業の方が意識はありますね。だが、意識がありますが、やっぱり企業っていうのは、目先の利益を考えますから限界はありますね。本当は、昔の日本みたいに、おじいさんが植えた木を、親父が育てて、孫がお金にするみたいなね、そういうゆっくりした循環の中に入れば良いんだけど、すぐ、お金にならないといけないという発想できていますから。
千川 特に日本がそうなんですか
朝倉 日本と・・・今は中国だよね。どっちかというと恐いですね。
千川 中国は環境問題を真剣に考えているでしょうか。
朝倉 考えていると思えませんね。礼文島とか行くと10年くらい前までは漂着するゴミはハングルかロシア語だったんですが、今は中国語が増えました。礼文島だけじゃなく、日本海側全部がそうですよ。なにしろ中国は人口の多い国だから、経済発展の方が優先されると当然環境破壊は深刻になりますね。
千川 相当の環境破壊が中国では進行してると考えた方がいいということですか。
朝倉 やはり、経済発展しか見ていないですから、日本もずっとそういう流れでやって来たんですが、今、中国はその十何倍の単位で消費することを憶え始めていますから。
千川 繰り返しになりますが、環境問題を扱う弁護士が、それで収入を得られるようになるシステムはどうやったら出来るんでしょうね。
朝倉 だから、税制を変えてくれればね。それはすぐ出来ると思いますよ。
千川 具体的にはどんなことですか?
朝倉 NPOに気楽に寄付出来るように、特に最近、子どものいない高齢のご夫婦でお金を持っている人などが気楽に寄付出来るようになればね。本来だったら、税金をキチンと使ってくれれば、国が守る物でもあるわけですよ。それを、守らないところばかりに使っちゃっているから、守る側にお金が流れてくれれば、弁護士を雇えるだけのパワーが出てきますからね。
千川 そのNGOとかNPOにお金を寄付すれば、課税されないという団体の認定って難しいですか。
朝倉 それは淘汰されるしかないでしょう。それは、都会の真ん中に原発でも造るとなれば、反対運動はできるだろうし、お金も集まるだろうけれども、そうはいかない。例えば、横田基地なんかでも、弁護士費用は多少は入る。それは、一つの世帯当たり月何千円が、十年くらいかかるから貯まっていくわけ。でもそれは、10年やって100万円くらいとかね。横田訴訟は、ある程度、原告を集めようと思えば集められるわけですよ。でも、地方に何かできたりする時には本当に集まらないですよ。ムラ社会だから、気持ちで反対してても、原告になると仲間はずれにされちゃたりとかいう事情のある人がいっぱいいるから。
千川 そういう所の事件をやるとしたら、むしろ、お金が入らないというか持ち出しになりそうですね。
朝倉 そうです。

今、最も感心を抱いている環境問題


千川 今、最も感心を抱いている環境問題は何ですか。
朝倉 ここのところ、ダムが多いですね。あと、結局、僕らは弁護士だから裁判について、ちょっとずつ変えていくことしかできないですね。できればスエーデンと同様の環境裁判所とか、そういうシステムは導入したいけれども、今の裁判官を見てると無理だよ、若手を含めて。
千川 皆問題意識が低い?
朝倉 全然ないですよ。
千川 最近の話ですが、元アメリカ副大統領のアール・ゴアの、まだ、日本で公開されてないけれど、かなりセンセーショナルな映画「不都合な真実」が出ましたね。これで環境問題に対する意識がアメリカですごく変わるような気がするんだけどどうですか。
朝倉 アメリカに関しては、オレはあまり好きじゃないです。なぜならアメリカ的な価値観で環境問題を考えても、あまり物事解決しないと思ってます。
千川 それは、どういうことですか。
朝倉 最終的には、科学的な方法で解決できるみたいな考え方ですね。科学万能、人間万能的な考え方ですね。そうではなくて、日本だったら江戸時代に戻せばいいだけ。もちろん、そこまで戻れないけれど、ちょっと電気消すとかね。そういう努力をすると1億何千万人だから、随分変わってくる。
千川 アメリカ型の考え方というのは、文明を進化させていけば、問題は解決できるというものですね。それには疑問を持っているということですか。
朝倉 一番、身近な事は産廃の問題なんだよね。使うから出る。出てそれでダイオキシンが問題になると、厚生省がやったことは、それまではゴミの量を減らせと、学校でも焼却することをやってた。それが、小さな炉だと温度が上がらないでダイオキシンが出ちゃうわけ。だから、あちこちから集めてずっとフル稼働するような施設を作りました。石川島播磨というのが高温溶融炉という新しい炉を作って、それで燃やせるようになったんですが、ダイオキシンにはいいのかも知れないけれど、また違うモノが出てくる可能性がある。
千川 それは、具体的に検証されているの。
朝倉 はい。
千川 そうですか。それは、なんでしょうか。
朝倉 色々あります。だから、出口でなんか新しい技術をカバーしようと思っても、元々ゴミを出すこと自体を抑制しようという政策や社会意識がない。
千川 考え方を変えなければならない。
朝倉 それぞれが変えなくちゃいけない。裁判を通じて、それを知ってる人もいるわけですよ。自立した市民に変わって行かないとダメだと思います。水なんかも、これはどこから来てるのかという、やっぱり、子どもの頃から教えなくちゃいけないから、最後は環境教育なのかな。それが、スウェーデンもコスタリカも素晴らしいです。
スウェーデンでもいろいろ紛争はあるんですよ。
同じヒシクイがね、スウェーデンにも来るわけです。ロシアにいて冬になると南に来るから、同じようにヒシクイの越冬地を鉄道が通る。それがそのままスウェーデンらしいんだけど、今まで道路で結んでいたものをCO2の問題があるので、鉄道輸送に替えようという風にやったんです、だけど、たまたまそこを通しちゃったんです。まぁ、本当はルートを変えれば良いんだけど、そのすぐ近くに飛行場がある。で、飛行場にぶつかっちゃうからルートが変えられない。それで、今、裁判やってます。
 これはね、スウェーデンの地方環境裁判所では、鉄道会社が勝ち、この間、高等環境裁判所では野鳥の会が勝ちました。
千川 で、環境裁判所は最高裁はあるの
朝倉 最高裁は普通の最高裁。
千川 じゃ、最高裁に行くんだ。
朝倉 いや、最高裁に行くルートと、EUの裁判所に行くルートがあって、
千川 選択できるわけですか?
朝倉 選択できる事案が、政府の方から言い出すと(上告すると)EUの方。でも、それでもね、決定が出るまでは何も作っちゃいけない。
千川 仮処分みたいなものはあるんですか。
朝倉 仮処分というか、日本とまったく違って、ちゃんと合意ができないうちは、もし作っちゃって環境に影響があったら、もう回復できないかもしれないという思想もあり、開発側も環境側も、それぞれ個人個人が同じ教育を受けてるから、振れ幅が狭いんです。だから作れない。
千川 ああ、それはしょうがないねって形になるんですか。開発はできない。開発側の鉄道会社なども、環境裁判になればその開発が止まるとは予測はしているわけですね。
スエーデンが、そういう教育をし始めたのはいつ頃からですか。
朝倉 環境法というのは1999年。ただ、昔から水裁判所というのがあって。
千川 水裁判所?
朝倉 もう19世紀からあったのかな。デンマークとスエーデンは平べったくて、水がすごく貴重なわけです。だから、水に関しては、そういう特別な管轄をもってる裁判所があって、その伝統があったんです。水だとか、その辺から入っていって、特に、あのチェルノブイリ原発事故の時に、自分たちだけで、やっていっても外国から環境破壊するものが来る、だから、自分たちのやってる環境を守る運動をなるべく全世界に拡げていってやらなくちゃいけないとなってる。
千川 それで啓蒙に来た人が、その女性の方(レーナ・リンダールさん)というわけですか。
朝倉 そうです。
千川 講演会があるんですよね。
朝倉 12月19日です。スエーデンの環境法典についての講演
スエーデン環境法典は1998年に成立し、1999年1月1日に施行された33章500条からなる大規模な法典です。
環境法典の規定は、環境に関する基本的なものに限定されている。
朝倉弁護士ら有志弁護士はスウェーデン環境法典の日本語訳をし、日本にも、この法典の精神を伝えたいと尽力しています。
千川 そういえば、森の風法律事務所ってホームページはありましたっけ。
朝倉 いや、作っていません。
千川 それは何か理由があるんですか?
朝倉 うーん、作ってるヒマがないんですよ。
千川 作りたいとは思っているんですか。
朝倉 まぁ、人数が増えてきましたから、いちいち説明するのも面倒なんですが。千川さんの所と違って、ホームページ見てきましたみたいだと、ウチの事務所的には、少し困る
千川 気楽に来られても困るってことですか。
朝倉 いや、干上がっちゃうよね。(笑)今は自分が興味あるものを、なかば趣味的にできるから、だから楽しい。それは別にお金を貰わなくてもいいわけです。好きなことですし。まあ、場合によっては足代出しても、したいと思うので。
千川 うんうん。
有田 ホームページにすると、色々、すごく大きく広いテーマだから膨大なものになってしまうでしょうからね。
千川 対応できなくなっちゃうかね。なるほどね。そういう理由ですか。でも、環境問題を扱うような法律事務所だと、世間にアピールしていく側面もあるから、その媒体としてホームページがあってもいいように思うんですが。
朝倉 どこでどんな問題が起きているかということは大体把握していて、それについて、誰がやってるとかも情報が入ってくるから、今のところはそれでいいのかなと思ってる。
千川 それは、要するに解るのは情報通の人達ですよね。
朝倉 うん、結構、NGOのネットワークもありますしね。最近、インターネットで随分変わりましたよ。昔、十何年前だったら弁護士の所に来るまでなんにも知らない人が多いわけじゃないですか。だけど、今では弁護士の所に来るまでに自分でネットで色々調べてくる人も増えてるから。
千川 依頼者の情報のレベルが上がったということですか。
朝倉 いや、知ってる人は知ってるんですよ。名前で検索すれば、こういうものの痕跡もありますから。それでも、よく話を聞いてみて受けられないというものもよくありますね。今のところ、開発側の企業からの依頼は全部断ってます。それは、事務所を作った時の理念ですからね。
千川 企業からの依頼というのは、結構あるんですか。
朝倉 ありますよ。内容によりますけれど。
千川 環境問題にお強いでしょうから、お願いしますというような感じですか。
朝倉 そうですね。
千川 うーん、なるほどね。それをやり出したら節操なくなりますね。
朝倉 うん、バックボーンがなくなるからさ。
千川 お金は貰えるんでしょうけどね。
朝倉 それは、それで、そちら側の弁護士も彼らは知ってるわけですよ。だから、どこに行っても、また同じ弁護士ですよ。
千川 うーん、なるほどね。環境問題を取り扱う上でのノウハウとか、そういったものがあるわけですか。森の風法律事務所の弁護士のどなたかがネットかなんか書いているのを見た覚えがあるんですが、「我々は環境問題に関するノウハウの蓄積は沢山あるから、今後それらを生かしていきたい」とおっしゃっていた。そういうものってありますか。
朝倉 企業側とか開発側の弁護士は結構大きな金を貰ってるからさ、それは普通の弁護士なんかと同じで、お金を貰っているから、例えば産廃などの法律や規則に詳しくなる。こちらは、そうじゃなく、お金は貰えないんだけども、好きだからやってる。そういう風にさせる何かがなければ続いていかないし、・・・それすごく危ういことなんですね。
千川 危ういというのは?
朝倉 あの、たまたまヒシクイにしても飯島博さんという有名な人というか、今、有名になった人がいたわけです。彼はもともと東京の人なんだけど、たまたま向こう(霞ヶ浦)に行ってて、素晴らしい戦略を持ってて、我々も彼との付き合いというのがすごく面白かったし、今も付き合ってる。そういう人が現れた所は、その人が生きている間は保つんです。でも、続かないんだよね。十何年前は、飯島さんのパワーより、同じ圏央道でも八王子の裏高尾部分・・・もう今出来かかっていますけどね・・・あっちの方の運動体が強かったんです。
千川 高尾山のほう?
朝倉 うん、反対する地主さんがいっぱいいたんです。で、当時の建設省は、彼らが死ぬのを待ってた。10年ね。で、死んで相続の時になって、いきなり売りませんかと、そういう話しかしなかった。それで、ばばばっと工事をやる。
千川 なるほどね。
朝倉 まぁ、だからちょっとずつ、なんかの裁判に勝って。それをマスコミを使って書いて貰って、それに敏感に反応する人達がいっぱい出てきたらいいなと思っています。情報を流すだけ流しても、やっぱりその元の教育がしっかりしてないと素通りしちゃうんだよね。ネットも、それに近い危険があるんだろうけど。ネットを調べてくる人は、ある程度積極的に情報を取りに来る人が多いのかなという気がする。
千川 なるほど。
朝倉 昔、その飯島さんと付き合い始めたきっかけは、高尾の方の裁判準備をしている時に、同じ圏央道の仲間でね、茨城の弁護士は誰も行ってくれなかった。で、困っている人がいるんだけど話を聞いてくれないかと、そういう繋がりを持った。ネットなどまだ、無かった頃だから。
千川 人と人との繋がりで、そういう事件が入ってきてたという事なんですね。

環境問題について弁護士の果たせる役割について


千川 今後、環境問題について弁護士の果たせる役割については、どんなことがありますか。
朝倉 仕事場が裁判所だから、個別の事件を通じて、さっき言ったような方法で心ある人に訴えていく事しかないですよね。ただ、裁判を通じて、例えば外国でこういうものがありますよとかね、そういうことを紹介して、何か変えられたらいいなって。
千川 裁判と絡むものと立法的なものとか政治的なものの双方を弁護士としてはやっていくべきだと思いますか。
朝倉 あの関東弁護士会の環境委員会では、環境教育をやっているんです。来年またスエーデンに行って、再来年の初めにコスタリカも行こうとしてる。コスタリカという国は軍隊がないからね、全くない。その分(軍事費)を教育費につぎ込んでいる。だから、コスタリカの教科書は素晴らしいですよ。
千川 へー、そうなんですか。
朝倉 スエーデンも軍隊はあるんだけど、今、ちょっと減らしていこうとしてる。スエーデン環境法典の中に例外規定がいっぱいあるんです。それは軍関係のことですね。
鉄道を作るとなると、その環境裁判所の公開の場での専門家を交えた審理があって、それで許可されないと作っちゃいけない。でも、軍の施設は例外。
千川 軍の施設は例外というのは、どういう主旨なんですかね。
朝倉 国防ですね。
千川 国防が環境よりも大事ってことなんですか。
朝倉 やっぱり、伝統的にバイキングの国ですから。
千川 陸がつながっているから、国防に対する意識が高いのですかね。
有田 環境問題の元凶は化石燃料だと思うんですが、これは産業革命以来始まったことで、この世界のシステムを膨らませる原動力になってますよね。環境問題は、この便利なエネルギー供給が続く限り、本当にはブレーキはかからないのではないかと感じてしまいますが。
朝倉 地球の一生を一年に置き換えてみると、大晦日の日の昼頃に人類が誕生して、大晦日の23時59分から0時までの、立った一分の間に地球環境を大きく変えた。これは全部人間がやったことなんだから人間がなんとかしなきゃならないんですよね。
有田 環境問題の元凶は化石燃料だと思うんですが、これは産業革命以来始まったことで、この世界のシステムを膨らませる原動力になってますよね。環境問題は、この便利なエネルギー供給が続く限り、本当にはブレーキはかからないのではないかと感じてしまいますが。
朝倉 地球の一生を一年に置き換えてみると、大晦日の日の昼頃に人類が誕生して、大晦日の23時59分から0時までの、立った一分の間に地球環境を大きく変えた。これは全部人間がやったことなんだから人間がなんとかしなきゃならないんですよね。
有田 石炭とか石油の元というのは、まだ地球上に酸素がほとんどない時期、すなわち人が住めない環境の時期の植物の化石ですよね。それを燃やしちゃうと、その時代の環境に戻っちゃうのかなと考えてしまいます。当然、人間が住めなくなる。よく、地球にやさしいという感情移入した言い方がありますが、本当は地球はヘッチャラなんじゃないでしょうか。地球が主体で人類がそこで自分の首を絞めてるだけのような。
朝倉 そのぉ、昔の日本の発想は非常によかったんですよね。人間だけがいるんじゃなくて、いろんな生き物がいて、そのネットワークの中で、危うくやってるということに気がついていた。
有田 アジアは、そういう捉え方が基本ですよね。キリスト教は、人を絶対的に神の下のトップに置いて考えますね。この世のリーダーは人間だと言い切っているようです。その考え方が、少し極端になると自然に対する認識にも影響しますね。産業革命以来、日本やアジアにも、その価値観は大きな影響を与えてきたんですが。
朝倉 突き詰めていくと教育の問題ですね。やっぱり平和がないと、どんなに言っても意味ないから、平和と環境は、ほぼ近い言葉で語られますね。だから、アメリカ型の合理主義が良いみたいというという言い方で環境問題を割っていくと、あまり割り切れない。いろんなパターンがあると思います。スエーデンはスエーデンで独自の環境に対する政策を国の基本に据えています。本当は日本でもこれに相当するような法律が出来ればいいんですが。スエーデンは個人個人から始まってるんです。教育に関する権限は日本で言ったら市町村、健康に関することは日本で言ったら県、防衛などは国。日本だったら全部一緒になってるでしょ。スエーデンは、それぞれ違うのです。
千川 ふーん、なるほど。自治体の持ってる権限が強いわけですね。
朝倉 さっきから環境に対するシステムって言ってるんだけど、本当は個々人が自覚すれば変わるんです。
千川 個々人の自覚なしには、やはり問題の解決は難しいということですね。
今日はどうも有益な話を有難うございました。
有田 ありがとうございました。
朝倉 いえ、どうも。(笑い)

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